第17章 呼び名編
「おはようございます、神崎さん。」
「…あ、おはようございます…。」
「あ、おはようございまッス、
神崎さん!久しぶりッスねー。」
「…そうですね。お久しぶりです。」
「どこか遊びに行ったんスか?」
「いえ、家で稽古したり…
ゆっくりしていました。」
「そうなんだ…神崎さんだったら
柳生家の当主もやり合えそうッスね」
「輿矩様は当主のお仕事が忙しいので
手合わせはほとんどしたことないです。」
「じゃあ、息子さんは?」
「息子?…ああ、若のことか…………。」
2週間ほど休んで、真選組に久々に復帰した。
その途中、すれ違い様に
隊士達に何度か声をかけられ、ドキドキする。
今まで、俺から挨拶して、
向こうも適当に挨拶するか…無視するか、
で、終わりだったのに。
ただ、俺が仕切ってた頃の
気持ち悪い挨拶や、謎の神扱いは
なくなっていてホッとする。
声掛けられるようになっただけならいいか…。
「あー、澪。久しぶりでさァ。」
「沖田隊長、副長、おはようございます。
長期休暇、ありがとうございました。」
「……神崎。」
沖田隊長に声をかけられ、丁寧に頭を下げる。
隊長も元気そうでヒラヒラと手を振った。
それに対し、副長は隈のできた目で
煙草をふかしている。
……ドライバーから人間に戻ってからすぐに
仕事が舞い込みやがって…って言いたげだ。
「………局長室で近藤さんが待ってる。」
「分かりました。」
副長が頭をガシガシと掻く。
寝不足気味のようだ。
……やっぱり、こんな長い休暇、
申し訳なかったかな。
後で副長の仕事も手伝おうと決めて
二人と別れた。