第1章 序曲
早朝の人気の無い電車。
ヘッドホンで音楽を聴きながら朝焼けに染まる紫の海をぼーっと眺めてる………フリをしながら視界の隅で静かに読書をする彼に意識を集中する。
癖がかった柔らかそうな藍色の髪の毛。活字を追う度に揺れる長い睫毛。本を持つ綺麗な手。足元に置かれた大きなテニスバック。
彼はアタシの事を知らないけどアタシは彼の事を知ってる…何て言えば誤解を招くだろう。
会った事がある訳でもないし、話したことも無い。目が合った事すらも無いし、ましてや学校なんて別々。
でも彼はある世界ではとても有名な人だから知ってる。別にその世界に詳しい訳では無いけども。
季節が冬に差し掛かったくらいから、朝練で早朝の電車に乗る時に彼女を見掛ける様になった。
いつも同じ車両の同じ席に座って音楽を聴きながら静かに目を閉じている。海が見えて来ると、その長くて綺麗にカールした睫毛に縁取られた大きな目を空けて真っ直ぐで陰りの無い目でずっと海を眺めてる。
ガタン、と電車が揺れる度に短めでサラサラした黒髪が揺れると一緒にヘッドホンもズレて、それを直す赤ちゃんみたいな手とかその仕草が可愛くて…つい目で追ってしまう。
いつも決まった駅で都内行きの電車に乗り換える彼女は東京の学校に通っているのだろう。制服の色合いが見覚えあるけど生憎思い出せない。
接点なんて何一つ無い。
そんなアタシ達(俺達)が
運命の悪戯で惹かれ合う。
でも恋と呼ぶには幼過ぎた
青春の一部のお話ー…
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