第2章 あなたの名前を教えて
幼馴染みという単語を聞いてどこかほっとした自分がいることに気づく。
どうしてこんなに安堵しているのか。俺はそう考えた時、あのポスターの付箋を思い出した。
急に頬が熱くなる。これが何を意味しているのか気づかないほど俺も鈍くはなかった。
「ほんとにすみませんでした!ではまた来週来ますね!」
彼女に失礼な質問をしたことへの恥ずかしさと、自分の気持ちに気づきはじめた戸惑いで、挙動不審だがそう叫んで速足に店を出た。
違う!これはあいつらが冷やかすから意識しているだけで…!
それに相手は年上の人!美人だし恋人とかいるだろ。
こんなガキ相手にしねぇって!
と頭の中では加速していく彼女への思いに終止符を打とうと試みるが、逆効果だった
俺は随分と店から離れたときに立ち止まる。
「ああ、もうどうすんだよ…」
まだほとんど話したことのない彼女に、笑顔やちょっとした優しさで恋に落ちてしまった。
今の拍動は試合が始まる前の時とそうかわらない。
来週どんな顔をしてあの人に会えばいいんだよ…。
手元にあるあの肉まんの袋を見ながら俺は少しうめいてしまった。
それに相談したくても、ほら言った通りだろうと大地にニヤニヤ笑われるに決まっていた。
この恋は、俺がどうするか決めなくちゃな。
それだけは心に決めて家に向かってもう一度歩きはじめた。