第3章 新しい日常
部活生の春休みは、あまり変化は無いと思っていた。
体育館は夕方まではは女子バレー部やバスケ部が使っている事が多いため、大体それから男子バレー部の練習が始まる。
部活の前までの時間を使って、学校の周りや、地元のファミレスやコンビニでバイトをしたり、バイトのない日は練習前まで家で寝たり、
それから練習に行って、夜遅くに電車に乗って帰る。
それが当たり前だった。
だが、こないだは、少しだけ、変わったことがあった。
久しぶりの、リオという少女との、再会。
あれ以来、終電よりも早い時間に帰宅することが多く、彼女と会うことは無かった。
別に、この間彼女が終電に乗っていたのは偶然だったのかもしれない。
だから、まだ多くの人が乗っている時間帯の電車の中に、リオの姿が無いか、ここ数日探していた。
しかし、彼女の美しい黒髪を見つける事はできなかった。
(連絡先・・・聞いておけばよかったな)
少しの後悔。
懐かしい面影を残す彼女と、もっと話していたかったなと思いながら、更に数日経ったある日、
その日は、あの日に似て、大学を出るのが遅くなった。
理由はいつもと同じ。
遅くまで自主練をした挙句、部室でわあわあはしゃぎ過ぎて時間を忘れていたからだ。
少し走早に、その間にマフラーを慣れた手つきで巻き、また、缶コーヒーを片手に駅まで急ぐ。
駅の看板が見えた頃、ふと、及川は時計を見た。
(終電・・・・・・)