第12章 夜に咲く真実
財布と、スマホだけを握りしめて部屋を後にする。
部屋を出る時に、ちらりとリオを振り返る・・・
「ごめん・・・っ」
そう言い残すと、及川はもう振り向かなかった。
彼女の、ミオの元へと駆け出したーーー・・・
ひとり残されたリオは夕焼けに照らされる及川の布団にしゃがみ込んだ。
まだ、残っている温もりを感じられそうで・・・
「ごめん、か・・・」
いつも彼がここで眠りにつくのを、息を潜めて見ていた。
その時だけは、時よ止まれと、何度願っただろう・・・
愛しい愛しい寝顔を見ながら・・・言えぬ想いを堪えていた・・・
「お馬鹿さん・・・ごめんじゃなくて、ありがとうって言ってよ」
もっと、突き放してほしい。
じゃないと、これ以上好きになってしまう・・・
リオの頬に、涙が伝う。
夕焼けに照らされ、輝きながらそれはポタリとシーツに落ちる。
こんなに、こんなに好きになっていた・・・
彼のことを。
だから、こんなに好きになっていた彼には、
好きな道を選んでほしい・・・
ミオの元へ行かせたのも、この為だ・・・
自分は死神で、彼は生きる人・・・
どうして自分たちは出会ってしまったんだろう。
出会わなければ、こんなに苦しく、切ない想いをすることなんて無かった・・・
本当に大切なもの以外、捨ててしまえたらいいのに・・・
私はどうして彼の魂を迎えに来なければいけないんだろう・・・
現実の残酷さに、目を背けたくなる。
「好きだよ・・・徹くん・・・」
静かに、誰にも気づかれることなくリオは涙した。
彼の布団の中で、彼の匂いに包まれながら・・・ーーー