第12章 夜に咲く真実
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花火大会 当日
午前練習だった及川は、昼過ぎに電車に乗り帰宅する。
途中、すれ違う人々が今夜の花火大会のために浴衣を着付けてもらい歩いていくのを見る。
(ミオ・・・浴衣着るかな・・・)
及川はまだ、今夜花火大会に行くか迷っていた。
ミオに会い、なんと言えばいいか、分からなかった。
彼女に会って、面と向かって好きと言われて、
自分は欲望に負けず、断りきれるだろうか?
この前だって、酒が入っていたとはいえ、
あれだけ抑えていたものを、せき止められなかった・・・
自分の感情を抑えられるか、わからなかった・・・
シャワーを浴びて、昼ごはんを食べて、少し仮眠して・・・
気づけば待ち合わせまでもう少し。
段々と夕焼けに染まっていく空を部屋から見ながら、
まだ、及川は決めかねていた。
「行ってあげて」
不意に、部屋の入口から声が聞こえた。
振り返ると、リオが立っている。
「リオ・・・?」
彼女は壁に寄りかかっていた体を離し、窓際に近づき、夕暮れの空を見つめる。
「最後って言うくらい、あの子は覚悟を決めているんだと思う。私がこんな事言うのも、おかしいかもしれないけど・・・運命に定められていたとしても、自分のしたい事を徹くんにもして欲しい・・・」
生きているうちに・・・
リオは振り返る。及川から見た彼女の表情は逆光でよく見えなかった・・・けれど、彼女の真っ直ぐな言葉が胸に刺さる。
「死んでしまったら・・・何も、誰にも・・・伝えられなくなっちゃうから」
「リオ・・・」
自分のしたい事をする・・・
自分のやりたいように、素直に・・・
「でも、俺には・・・リオだって大切な人なんだ・・・」
初めて口にしたかもしれない。
彼女への想いを・・・
「私は、大丈夫だから」
まるで、及川の心を呼んだかのように、リオは言った。
「私のことは、・・・大丈夫だから。行ってあげて?」
ミオは私にとっても、大切な妹だから・・・
そう背中を押してくれるリオの言葉に、及川は弾かれたように立ち上がった。