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Dearest〜最愛の君へ〜

第11章 秘めた想い





ミオに口付けされたと理解するのは、彼女の唇がおずおずと離れてから・・・


ほんの一瞬の触れ合いだったけれど、
普段は控えめな、彼女の想いの熱さ、大きさを知るには充分過ぎて・・・

「リオの、代わりだっていいです・・・」


震える唇から言葉がこぼれる。


「私を・・・見てはくれませんか?」


あなたが好きなんです・・・


そう訴えるような彼女の想いが、

及川の頭で抑えていたものを
ガラガラと崩れさせた音がした・・・ーーー




「あぁっ、くそっ!」


次の瞬間、及川はミオの肩を掴み、後ろのフェンスに押し付け、噛み付くように唇を押し当てた。


「んんっ!」


熱い・・・柔らかな唇。
薄く開いた口内に、舌を差し入れる。


「はぁ・・・っん・・・ぁ・・・っ!」

甘くとろける。
どちらの唾液かも、わからない。



どうして、こんなに心を掻き乱すんだろうか
いっそ嫌ってくれた方がどれだけいいか。


でも、許されるなら、

この秘めた想いが・・・
この口付けから伝わっては、くれないだろうか。


彼女を愛す資格のない自分が、切に願うことだった・・・





ミオの息がもたず、苦しくてズルズルと体が下にずり落ちていくのを、腰に手を回して止める。

我に返って唇を離す及川。

つ・・・と唇の間にできる銀色の糸が月明かりに照らされて光る。



(何を・・・俺は・・・)


「っ・・・ごめん・・・」


ミオは今にも泣きそうな表情を隠すように、俯いた。


この控えめな少女がために溜め込んだ感情を・・・
どうして受け止めてあげることが出来ないんだろう。


悔しさに唇を噛みつつも、及川は絞り出すように言った。



「帰ろう。駅まで、送る・・・」



無言で頷くミオ。

二人の間には微妙な距離が出来てしまう。




仕方ない・・・一度踏み込んでしまえば、

もう、戻すことはできない・・・ーーー




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