第9章 姉の顔
命の時計の針は、相変わらず不規則に進み、
そしてリオと過ごす日々はあっという間に過ぎていき、
気づけばカレンダーは6月のページまで捲られていた。
その間に及川は最後の春リーグがあったり、教育実習のために母校へ行ったり、とても充実した期間となった。
今日は土曜日。
教育実習で抜けた3週間以来、久々に部活に参加した日でもあったが、自分のいない間もチームは何のトラブルもなく、むしろ成長し続けてくれて、ほっと胸を撫で下ろして帰る午後10時。
駅までの道を、イヤフォンで音楽を聴きながら帰っていた及川の目の前いっぱいに、リオの顔が映る。
「うわぁ!!」
「ちょ、その反応失礼過ぎるよ!」
急に現れた彼女に驚き後ずさった及川。
「びっくりした〜。え、外じゃ会わないって・・・」
リオが外で話しかけると、それに応えてしまう及川は傍から見たら変な人だと思われるから、あまり外では姿を見せなかったリオが、今日は珍しくこんな学校を出たすぐの所で現れた。
「急用なの、徹くん。お願い、力を貸して!」
今まで見た事もないくらい、切羽詰まった様子のリオ。
何事かと思い、及川は彼女に尋ねる。
「どうしたの?」
「ミオが・・・っ・・・とにかく、こっち来て!!」
そう言って踵を返すリオを慌てて追いかけたーーー・・・