第7章 二人の事情
「あら?2人とも知り合いだったんですか?」
「なんだ〜ミオも言ってくれたら良かったのに〜」
「この人が及川さん、なの?」
顔を引き攣らせて質問するリオとそっくりなミオ。
うん、今日も激似だ。
「そうそう!うちの強豪男子バレー部のキャプテン!今、彼女いないらしいから狙い目だよ〜」
「なっ、そんな情報吹き込まなくていいよっ」
イタズラっぽく笑う彼女たちと、全く笑っていないミオ。
「ミオは別の大学から編入してきたんで、もし困ってたら及川さんよろしくお願いしますねっ」
あ、ちなみにポジション、セッターなんで!と付け加えて紹介される。
編入・・・ということは、一つ下のミオは今、三年生ということ・・・
「じゃあ、また練習で〜」
そう言って去っていく少女たち。
ミオは何も言わず、及川の脇をすり抜けた・・・・・・
「待って!」
咄嗟に、ミオの腕を掴む及川。
「何、ですか・・・っ」
鋭く自分を睨むミオ。
二人の間に、何とも微妙な空気が流れる。
「リオと・・・・・・話したんだ」
「またそんなこと・・・・・・」
「本当なんだ。俺、リオと・・・」
「ふざけないで下さい!」
声を荒らげたミオ。
先に歩いていた彼女の同期たちが振り返る。
「リオは亡くなりました・・・もう、リオの話はしないでください」
ばっと、腕を振りほどき、足早に過ぎていったミオ。
振り払われた腕と、彼女の哀しそうな横顔だけが・・・及川の脳裏から離れなかった。
振り払われた手を見つめる。
春の風が、静かな日下がりの及川に吹き付けた・・・・・・