第5章 春の少女
「へっ?」
何でって・・・と、口ごもる。
そんな様子の及川に、少女は目を釣り上げたまま、口を開いた。
「リオは、私の姉よ。双子の・・・」
「ええええぇぇぇぇぇ!!!?」
これ以上開ききらないくらい、目を見開き、及川は絶叫した。
「双子っ!?リオが!?」
「そう、私、妹の、ミオ」
(嘘でしょーー!!)
リオに妹がいるのは聞いていたけれど、
まさか双子だったなんて、
しかも、自分と同じ大学に通っていたなんて・・・!
「え、じゃ、君・・・リオの妹なの?」
「・・・妹のミオ。・・・一卵性の双子だから、よく間違われたけど・・・」
また及川を睨む。
「ご、ごめんほんと・・・知らなかったんだ、リオが双子だったなんて」
と、心底申し訳無さそうに頭を下げる及川。
顔を上げて、彼女・・・ミオを見下ろす。
何とまぁ、もうそっくりそのままリオじゃないかと言いたくなるくらい、ミオは彼女と瓜二つだった。
長いまつ毛も陶器のような綺麗な肌も、背も、何もかも、リオでしかなかった・・・
でも・・・
「間違ったって言うなら、いいけど・・・さっき抱きついてきたのも、許す」
リオの方が、少し、柔らかな雰囲気を持っている気がした。
彼女は、ミオは、"凛"と言う言葉が良く似合うと思った。
単に、突然抱きついた及川に、警戒しているだけかもしれないが
怒っていた彼女は、ほんのりと頬を赤らめて、及川から目をそらす。
「それじゃあ、私はこれで・・・」
「ちょ、ちょっと待って!」
その場から立ち去ろうとしたミオの腕を掴む。
「きゃっ」
「ね、リオは今、どうしてる?俺、こないだドライブに連れてった時に、何もしてないつもりだったんだけど、何かすごい嫌な事させちゃったかもしれないんだよね」
リオに会いたい・・・
彼女と繋がるには、目の前のミオに頼むしか、他なかった。