第21章 エピローグ
ーーー・・・
「失礼します・・・」
ナースに案内されたその部屋は、まだカーテンで仕切りをされていて、恐る恐る中を覗こうとすると、丁度1人の女性と鉢合わせた。
「お義母さん!」
「あぁ、徹ちゃん、さっきまでハワイにいたんですって?お疲れ様。この子が早く生まれたいって言って聞かなくてね・・・」
「いえ、俺のことは全然。お義母さんやお義父さんがそばに居てくれたので安心できました。ミオは・・・っ」
その女性・・・もといミオの母親は、ハンカチで口元を押さえて、にこりと微笑んだ。
「中へ入ってあげて・・・」
「はい・・・っ!」
どくん、どくんと心臓が跳ねる。
今日、この日をどれだけ待ち望んだかーーー・・・
「ミオさーん、旦那様がおみえになりましたよ〜」
「はーい」
カーテンの向こうへ・・・
そこには・・・
「ミオっ!」
ベッドで体を起こしていたミオは、母親によく似た顔でにこりと微笑んだ。
「おかえりなさい、徹くん」
及川は、ミオを、
自身の妻を腕の中へと抱き込んだ。
「ただいま、ミオ・・・」
その唇にキスを落とす。
「ごめん、間に合わなくて。国見ちゃんに無理言って飛ばしてきてもらったんだけど」
「ううん、あなたがこっちに向かってるって聞いて、凄く心強かった・・・ありがとう」
長い間痛みと戦ったミオの表情は晴天のように清々しく、及川は愛しさがこみ上げた。
「体は、平気・・・?」
「うん、大丈夫よ・・・・・・ねぇ、会ってくれる?」
そう言って、ミオ自身の腕に抱きしめていた温もりを、差し出す。
及川は、その温もりを震えそうな腕で抱いた。
柔らかなタオルに包まれた・・・
「はじめまして・・・、やっと、会えたね・・・」
今日、この世に誕生した、新しい命・・・・・・
及川とミオ、ふたりの愛の結晶・・・・・・
「生まれてきてくれて、ありがとう・・・っ!!!」
及川は、産まれたばかりの赤ん坊と、命をかけて自分との子を産んでくれた妻を抱きしめる。
涙が頬を伝う。