第19章 愛しい人へ
「リオ、ここで何してるの・・・?」
体を離し、真っ直ぐにリオを見つめるミオ。
そんな妹の手を握ったまま、リオは口を開いた。
「私はね、死神をしているの」
「死・・・神・・・・・・?」
「そう。亡くなった人の魂を迎えにいく仕事。・・・最初はね、徹くんの死期が迫っていたから、徹くんの魂を迎えにいく仕事があったんだけど・・・」
手を握る力が強くなる。
「ミオの魂を、迎えにいく仕事に、変わったんだ・・・」
それは・・・
「え・・・?」
ミオの死を表していた・・・
「私、死んだの・・・?」
呆然と尋ねるミオに、唇を噛み締めるリオ。
そんな様子の姉に、質問の答えがイエスだと言うことを察した。
同時に、先程、あのライブハウスでの出来事が蘇ってくる・・・
「私・・・」
あの時、徹くんを突き飛ばしてそれから・・・
「目が覚めたようだな」
唐突に聞こえる、男の声。
2人は顔を上げると、黒いフードを被った人物が、立っていた。
「扉を」
そう呟くと、近くの白の景色が変わり、眩しいくらいの光が指す。
眩しさに目を細めると、リオはミオの手を握ったまま立ち上がった。
つられるようにミオも立ち上がる。
光が次第に弱まると、目の前には・・・
「川・・・・・・」
扉の向こうに、深くもない、清らかな、川が見える。
「もしかして、三途の川・・・?」
こくん、とリオは頷く。
あぁ、私、本当に・・・・・・
死んでしまったんだね・・・
沈黙が、ミオの足を前へと動かす。
リオの手が離れる。
この川を渡れと、いっている・・・
誘われるように、川へと近づくミオ。
「私、本当に死んだんだね・・・」
もう、あの日々には帰れないのか・・・
彼と一緒に登校したり、休み時間に話したり、帰りは隣の席に座って一緒に帰ったり、オフの日は出かけたり・・・
もう戻れないのか・・・・・・
あと一歩踏み出せば水に触れる所までくると、ミオはすうっと息を吸った。
そして、振り返り、リオに向かって微笑んだ。
「でも、よかった・・・」