第19章 愛しい人へ
こんな、
こんな苦しい表情をする及川を、国見は今まで見た事がなかった。
本当に予期せぬ事態だったからだろう。
自分が死ぬって分かっていたのに、それを、
体を張ってねじ曲げたのが・・・ミオだったから。
「及川さん」
酷く心が乱れている及川を、できるだけ安心させるように国見は柔らかい表情を浮かべた。
「俺もきっと一緒です」
「え・・・?」
「俺も・・・ミオの立場だったら、同じことをしていたと思います」
自分の大切な人が死ぬとわかっていて、それをどうにかしたいと思うのは・・・みんな、同じ。
誰かを大切に想うからこそ、できること。
「大切な人には、どうしても生きてほしいって思いますし、及川さんは、ミオにそこまで思ってもらえて幸せだと思います。羨ましいですよ・・・」
微笑む。
優しく、優しく・・・。
きっとミオなら、こうして欲しいと思うから・・・
「だから、今は信じて待ちましょう。ミオはきっと、目を覚ましますから」
「・・・うん・・・・・・」
及川の顔色が、少し元に戻った気がする。
「信じるしか、ないよね・・・」
ミオ・・・・・・
もう一度、君の笑顔が見たい・・・ーーー