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Dearest〜最愛の君へ〜

第14章 それぞれの想い





それから少し監督と話をしていたが、その間もミオは泣いていて、顔を上げなかった。

「じゃ、俺は帰るな。帰りはタクシーを使いなさい。彼女のことも、送ってやれ、な」

監督は簡易用の椅子から腰を上げて、タクシー代をポンッとベッドに置いて去っていった。

「一応あと30分くらいはここで休んでいて下さいね」

ナースも去っていく。


あとに残されたのは、未だに鼻をスンスンといわせるミオ・・・



「ミオ・・・泣きすぎ」


苦笑いをして、泣き続けるミオに手を伸ばす。
頭にポンッと手を乗せて、柔らかな黒髪を撫でてやる。

すると、ミオはその乗せられた手を取り、温もりを確かめるように小さな両手で包み込んだ。



「ミオ・・・?」

「良かった・・・、及川さん、死んじゃうかと思いました・・・っ」


目が、兎のように真っ赤だ。

こんなに自分を想い泣いてくれた彼女。
包み込んでくれた手が、温かい。


(この温もり・・・忘れたくないな・・・)



及川は体を起こし、ミオの体を抱き寄せた。


「ごめん、ね・・・心配かけて」


ミオは抗うことなく男らしい胸に閉じ込められる。
優しいミオの匂いがする。

心臓の音がとくん、とくんと聞こえて心地良い。

彼女がここに生きていると知らせるように・・・











「すみません及川さん、いいですか?」

「!」


カーテンの向こうから聞こえた声に、ぱっと体を離す。


「・・・国見ちゃん?」

「はい、いいですか・・・?」

「どうぞ」


シャーッとカーテンが開き、見知った顔が入ってくる。

「良かった、目が覚めたんですね」

「ごめんね〜」

「心臓止まるかと思いました。及川さん、ぐったりしてたんで」


流石のポーカーフェイスの国見も、及川の無事を目で見てほっとした様子だった。


「体は平気だよ。まだ打った所は痛いけど・・・。わざわざここまで来てくれて、ほんとありがとう」

「はい・・・あと」

「?」


国見は何かを言いたそうに、ちらりと隣にいたミオを見た。
その視線に気づいた及川はミオの方を向いた。

「ミオごめん、俺、喉乾いちゃった。何か買ってきてくれる?」




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