第8章 その肆〈信長ルート/艶有〉
織田信長の居城である、安土城にて。
すっかり陽が昇り、そろそろ昼に差し掛かろうという刻限。
時折、階下から聞こえてくる音が、静まり返った天主に響いていく。
天主には、3つの人影。
安土城の主である、織田信長。
その忠臣である、豊臣秀吉。
そして、秀吉に抱き上げられている女、だ。
しばらくの沈黙の末、先に口火を切ったのは信長だった。
「おかしな事を言う。……この俺に召し抱えられて喜ばない女はいないと、が現れた当初、貴様はそう言っていたな?」
「……それはっ……」
「状況が違う、とでも言いたいのか?変わったのは貴様の事情だけだろう。……勝手を抜かしおって。」
「……っ」
信長は冷たい瞳で秀吉を見据えながら、ハッキリと告げた。
が一体、誰のものなのか―――……
「……の運命は俺のものだ。誰に何を言われようとな」
「どうして……!そこまでに固執なさるのですか?」
「最初から言っているだろう。俺はこの女が気に入っている。……易々と他の者に渡す気はない。無論、貴様にもな」
「…………」
「分かったなら、早く行け」