第3章 その参〈織田信長/艶少〉
〈※後半部分に本編ネタバレ有り〉
「……秀吉さん?」
誰もいない部屋の中で、が愛しい人の、名を呼んだ。
いつ眠ってしまったのか、全く覚えていない。けれど、甘い情事の最中に、大事な事を聴いた気がする。
はフラフラする身体を叱咤しながら、何とか身支度を済ませて、秀吉の御殿へと向かった。
……………………
…………
外へ出ると、早朝なだけあって人気はなく、鳥の囀りだけが聴こえてくる。
少し前まで白んでいた空に、澄んだ青が濃く広がり、冷えた空気が、をより覚醒させた。
(私、秀吉さんに伝えなきゃいけない事がある。私は……)
しかし、は秀吉の御殿へ行く前に、ある人物と出会ってしまう。
安土城の主にして、秀吉の主君でもある、織田信長だ。
「。こんな早朝に何処へ行くつもりだ」
「え?……信長、様?」
「ちょうどいい。貴様、今から俺の天主へ来い。暇潰しに、いつもの囲碁勝負をする」
「……今から、ですか?だって、昨日も……」
「俺の決めた事に口答えは許さん。早く来い」
「…………はい」