第1章 その壱〈豊臣秀吉/艶有〉
「秀吉さん」
「ん?」
「ごめんなさい。秀吉さんの声、聴こえてて……」
「!」
「私、別に信長様の事は、何とも――……」
言いかけて、そっとの唇に、秀吉の人差し指が当てられた。
秀吉は少し嬉しそうな、でも困ったような、そんな顔をして切なげに言った。
「が信長様を何とも想ってなくても、あの方は、欲しいモノは必ず手に入れる。……お前の事も」
「そんな事……っ!でも、私は……」
「だから、お前があの方に弄られて、その躰に不本意な熱が灯るなら――……」
「……っ」
「俺が慰めてやる。さっきみたいに……お前をどろどろに蕩けさせてやる」
「そんな……何、言って……」
「乱れるお前は、信じられないくらい、可愛かった。だから、頼む。この役は、俺にやらせてくれ……」
「っ……!」
秀吉が、愛おしそうに、の手の甲に口付けを落とした。
は、こんな事間違ってると思いつつ、あまりに真剣な秀吉の瞳に、願いに、頷いてしまった。
もう引き返せない………
この日から、2人の秘密の関係が始まった。
「宜しく、お願い……します……」
「おう。任せとけ!……嬉しいよ、……」
続く(次ページあとがき)