第3章 恋愛ごっこ【R18】
しばらくのやり取りの後、ワントーン低い声で黒尾さんが電話口に出た。
「なにしてるんですか黒尾さん」
『えっ? ツッキー? どういう事?』
「その子、僕の彼女なので手出さないで下さいね。ついでに変な虫が付かないように見張っておいてください」
『なんだよツッキー、めっちゃ彼女ちゃんの事好きなんじゃん?』
黒尾さんが電話越しにニヤニヤしているのが分かる。
「好きでなにが悪いんですか? 黒尾さんも早くちゃんとした相手見つけないと、すぐに売れ残りますよ?」
黒尾さんにからかわれるのは癪だが、好きなものは仕方ない。
これが人を好きになると言う事だから。
『ちゃんと大事にしてねーと、俺が横から奪っちまうぞ?』
「大丈夫です、黒尾さんなんかに奪われるほど僕たちの関係はヤワじゃないんで」
『ケッ、ノロケやがって! おい! 木兎! マネちゃんツッキーの彼女らしいぞ!!』
『なにィ!? マジか!! ついにツッキーにも春が来たか!!』
再び電話の向こうで盛り上がる2人と、巻き込まれてしまったミカさん。
『なんかよくわかんないけど……また掛け直すね!』
そう言って電話が切れると、静かな現実へと引き戻される。