第6章 ハジメテ
ボーッとする意識の中で、頭上から聞こえるたくさんの数字は、どうやら救急車の電話番号らしい────。
「119……でしょ……?」
思ったよりも掠れた声で、ケホケホと咳き込めば慌てた飛雄が119と叫んで今にもダイヤルを押しそうになったので大丈夫と言わざるを得ない。
「よかった……急に倒れるから、めちゃくちゃ心配したんスよ??」
「……また、敬語……」
安心する飛雄とのやり取りが、先程の出来事が夢であったかのような錯覚をさせる。
「ドア叩いてたやつ、しばらくしたら居なくなりましたよ……」
しかし、飛雄のその一言でやはり現実であったと痛感させられた。