【テニプリ】a short story.【短編集】
第8章 【不二】月が欲しいと泣く子供
ついつい、子供の頃の彼女と比べてしまうと。会う度に大人になっていく彼女に気付かされ、はっとする。彼女には彼女の世界があって。僕には僕の世界がある。子供の時交わっていた僕らの世界は、大人になるにつれ、離れていく。
それでも僕が月を見る度千花を思い出すように、僕の言葉に悩み、考える時間があるように、魔法をかける。
――千花の欲しいものが、僕だったらいいな、僕と、同じように。
千花の、僕の手を握る力がぎゅ、と込められた気がして、同じように握り返すと。千花が嬉しそうに微笑んだから、今はこれでいいや、と片付ける事にした。月を取ろうと焦がれる子供はもういないけれど、欲しいものは形を変えて、ずっとこの心を占めているのだ、と、また改めて気付かされながら。