【テニプリ】a short story.【短編集】
第7章 【真田】寂しそうな微笑
「次に会えるのは、二週間後のオフの日だ」
そう、まるで業務連絡の様に。朗々と響き渡る声で告げられた声に苦笑しながら頷く。私は部員じゃないんだっつーの、なんて初めは思っていたけれど、慣れとは恐ろしいもので、今では淡々と受け入れている。
「では、またな、千花」
そう言うと踵を返し去っていく真田。その身のこなしすら堂々としていて美しくて、何かの武道の演舞中かな、と思わせる程。ただただ、女心って物を全く分かってないらしい。
そもそも、私達は所謂恋人同士で。しかもなんと、あの真田からの告白で付き合い出した。元々私も真田の事が好きで、結婚を前提に――とまでは行かなかったけれど、幸せにする、と言う責任感溢れる彼らしい言葉に涙を流して喜んだ物だった。
所がまぁ、話を初めに戻すと。関係としてはちょっと仲良しのテニス部員程度と言うか。性別が違うだけと言うか。つまり、何も無いのだ。こうして彼の貴重なオフを独占出来る権利は持っているけれど、それだけだった。
今日だって、部活動が無くて一日一緒にいれる、と言う、この先あるかどうかも疑わしい奇跡的な日だった。秋らしい気候だから紅葉狩りに行こう…この年齢のデートでそんなのありなの、と思わなくもないがまぁそれはいい。午前中は久しぶりにお爺様が稽古を付けて下さるから昼食後の集合で頼む…一歩、いや百歩は譲るけどまぁいいとして、だ――
「げっ、真田副部長」
「げっ、とは何だ赤也。俺に会って何か疚しい事でもあるのか」
「どうも、赤也くん」
「あ、千花さん…チッス」
何だその挨拶は、たるんどる!!!と街中でお説教を始める真田と、それを顔面蒼白で受け止める赤也くんを、心持ち離れて見守りながら、内心溜息をつく。
紅葉を狩りに狩って帰る途中。今日も手も繋がないまま、一日が終わろうとしていた。山道でも大丈夫な靴を履いて準備万端の私は、荒れた山道だろうが何だろうが、何処でも真田についていけた。何とも女の子らしくない私、そして後ろで足を滑らせても声をかけない限り気付かなさそうな真田。逆に良いカップルなんじゃ、と自嘲する。