【テニプリ】a short story.【短編集】
第5章 【観月】君と林檎の樹の下で
「貴女がロマンチストなら、僕はリアリストですからね。多少の矜持もありますから、心の動きを言葉にするなんてできません――でも、自分の気持ちを常に行動で表してきたつもりですよ」
その言葉が全て事実なら、なんて、もう考える次元では無いのだ、と悟る――きっと彼の言う事が、全て。ずっと開かれたままの私の目はちりちりと痛む。ぎゅ、と閉じると、とうとうぼろり、と大粒の涙が零れた。
「千花さん?僕に言うことがあるでしょう」
神様の前でこんな事冒涜かも知れない、けれど。この人には何の隠し事も出来ない、私にとっての神様みたいな人なんだ――
「観月さん、好きですっ…」
泣きじゃくりながらそう言う私に、観月さんは少し驚いたような表情を浮かべた。
「んふ、良くてありがとう、程度だと思っていました」
「…予測を外れる、私は嫌いですか…?」
「いえいえ、まさかそんな」
笑いながら観月さんが差し出す手を取ると、もう片方の手も取られ、向き合う。――その格好はまるで結婚式のようだ、なんて。
「むしろ、理想的ですよ。千花」
いつもとは違い、年相応の笑顔を浮かべた観月さんに安心して、私もやっとの思いで泣きやむ。そして、彼が綺麗だ、と言ってくれる笑顔を浮かべるのだ。