第4章 "好き"の行方は知らぬまま、
一体どうしてこうなったのか―――。
眼前に這いつくばる3人の男子高校生を見下ろし、そらは頭を抱え込むのだった。
8月最後の日。本来ならば、自室でまったりのんびり本でも読もうかと思っていた。そんなそらの密かな願いは、突然の3人の訪問者によって打ち砕かれた。
とりあえずその3人をそらは自室に上げた。3人をそのまま待たせ、そらはキッチンへと向かう。今日も今日とて暑いなぁ、と1人ごちて麦茶を注ぎ、トレーにクッキー等のお菓子を載せ、部屋へと戻る。
扉を開けて、それからそらはギョッとした。ローテーブルの上には、参考書やらプリントやら、3人の所持品と思しきものが高々と積み上げられていた。キチッと正座し、無言で見詰めてくる彼等に、そらはなんとなく察してしまった。
カタ、と勉強机にトレーを起き、正座する3人の向かい側へと座る。そしておもむろに口を開いた。
『えぇと、これは……………なに?』
部屋の空気がいつもよりひやりとしているのは、最早エアコンのせいだけではあるまい。明らかに怒りの滲み出る声の問いに、しかしあっけらかんとした返答。
「宿題です。あ、全部白紙の!」
『…全部白紙ィ?』
ピク、とそらの頬が引き攣る。それを知ってか知らずか1年ボウズ―――灰羽リエーフはニコニコと人懐っこい笑みを浮かべてえへへと笑う。
「いやぁ、だって、合宿で忙しいんスもん。しかもなんか俺だけ宿題めっちゃ多いし!」
犬岡と芝山の方が少ないのにぃ、と口を尖らせる灰羽に、そらは不快感を顕にした。
「お、俺はちゃんとやったぜ?……数学だけ」
そう言うのはキャプテン―――黒尾鉄朗なのだが、いつもの覇気は何処へやら。190近い巨体を丸める姿は、どこか滑稽にも思える。
そんな2人に挟まれて、プリン頭―――孤爪研磨はため息と共に呟いた。
「翔陽の練習手伝わなかったら終わってた」
『へぇ、そう………』
段々と温度を無くしていくそらの返答。戦々恐々とする3人を見据え、そらは立ち上がる。
『こンの、バカ共があぁ―――ッ!!』
そして、冒頭に戻るのである。