第10章 お持ち帰りの長い夜【一松】

《一松side》


お持ち帰り、してしまった。

今、ラブホに入ったところ。

一体、なんでこうなったんだ。

ベッドに座ったおれは、緊張しながら隣の彼女を盗み見た。

ノースリーブの白いニット、短い茶色のスカート、すらりと伸びるストッキングを履いた足、酔いが回って赤くなった頬、少し眠いのかトロンとした目。

エロい……。



きっかけは、トド松に誘われた合コンだった。

ゴミでクズなおれなんか連れて行ってもしかたないだろ？

当然断ったが、トド松のやつ、今日に限って食い下がってきやがった。

なんでも相手に猫好きの女が来るらしい。とにかく猫に詳しいやつを連れていきたいんだって。

そんなわけでおれは半ば強引に連れて来られた。

案の定まったく喋れず、終始うつむいていたが、たまたま隣にいたのが例の猫好きの女だったようだ。

愛菜と名乗った彼女は、飼っている猫の写真をおれに見せてきた。

白黒のはちわれ猫で足の先だけ白い靴下柄。肉球もピンクで、めちゃくちゃ可愛い。

そこから猫の話題に花が咲き、気づけばおれたちはトド松たちそっちのけで話をしていた。

これだけ気が合うと、そのまま帰りたくなくなるもんだ。酒の勢いもあって、そのままラブホに来てしまった。

いや、そりゃ、めちゃくちゃヤリたいですよ。下心があったから来たわけだし。

でも……。

もう一度おれは愛菜ちゃんを見た。

あー無理！　クズで童貞なおれには荷が重ーい！

今さらながらラブホに来てしまったのを後悔している。

おれなんかにできるわけがない……。

そのわりに下はギンギンだったりする。

どうすりゃいいんだ……。

おれはうつむいた。