• テキストサイズ

妖狐の籠

第1章 狐


何年も生きている我にとって

人との出会いは一瞬


それでも構わぬ




月が輝いている夜

まだ幼い黒髪の少女を見つける

妖怪が人間に惚れたなど噂がまわれば

『狐』の族は追放されるであろう

近寄ってはいかぬ

それでも…



刹那にして

其方と同じくらいの年の『人』に化ける

ゆっくりと近寄る


「…っ、だれ?」


怯えたような、警戒されたような

大きく目を見開き我を見る其方


「怖がらないで、
僕は同じくらいの友達に会えて嬉しいんだ」


全くの嘘だが いたしがたない


「そうなんだ…
私は4歳だけど… あなたは?」


『人』で4つということは

こちらとしてはまだ赤子か…


「よかった! 僕も同じ4歳だよ
ねぇねぇ、名前は何ていうの?」


「千夏…」


もじもじと可愛らしく放った名は

魔力があるように我の心にとまる


「千夏っていうんだね
僕は狐珀(こはく)っていうんだ」


千夏の前に手を差しだす


「ほらほら、握手だよ!
これからもずっとよろしくね!千夏!」


月光に照らされてよく見える其方の顔

我は生涯忘れないであろう

美しい黒髪に長きまつ毛

照れながらも笑う千夏に

我はもう離れられないかもしれぬ
/ 22ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp