第2章 烏
背中についた黒く大きな羽で
狐珀を空から探す
妖怪は案外、色々な所にいる
誰かの家の中や大都会にいる事もある
でも、狐珀は恐らく
山にひっそりと住んでいるに違いない
そういう所が好きな奴だから
山の上を飛んでいると
川で遊ぶ子どもを見つける
女の子と男の子だ
…ん? 男の子…?
違う、あの髪色、容姿は
紛れもない狐珀だ
…やっぱり思った通りだ
則を無視して『人』と触れ合っている
『人』の姿に化けているから
女の子でも視えるのだろう
すると、狐珀が俺に気づいた
俺は狐珀と話をする為に
山の中にある祠に着地した
「人間に惚れた『狐』がいるという噂は真か」
俺にはわかる
狐珀はあの少女に惚れている
「我に聞いても答えられぬ
長い間、独りでここにいるからして
我が族と共に生活をしていない」
「そうか、それは残念だ
なら先程、川にいた少女はなんだ」
「あれは後々喰らう」
「『狐』が『人』を喰らうなど
聞いたことないな」
そもそも妖怪は『人』を食べない
余程のことがない限り
「いいか、俺は狐珀に忠告しに来た
妖怪の則を忘れるんじゃない」
「そんな事わかっておる」
狐珀のこの態度はわかっていない
「俺ら妖怪は『人』と接することなく
皆、そうやって生きてきた
このままだと『天狗』様が…」
お願いだよ
俺の話聞けよ
「黙れ」
狐珀の魔力で
俺は一瞬にして『化猫』に姿を変えられる
「わかっておる…
わかっておるから…」
苦しそうに狐珀が言った後
俺をそのままにして何処かへ行く
俺は放置なのか
いずれ元に戻るだろうが…