第35章 とりかえばやものがたり　― 番外編 ―＜R18＞

帝は入内を断って東宮の尚侍として出仕した舞の姿を今も見たくてたまらず、具合が悪くて寝込んでいる東宮を見舞うと称して足を運んだ。

誰にも言わずこっそりと出掛け、帝は御帳台の後ろに隠れて横になる東宮と付き添う舞の姿を覗き見していたが、女房に帝がこちらにいらしているという事を明らかにされ、今来たように誤魔化しながら表に足を運んだ。

「東宮の容体はどうなのだ、祈祷はしていないのか？」

問うと舞は黙っている訳にもゆかず答える。

「何とはなしに具合をお悪くされました。物の怪のしわざでしょうか」

あれこれ話しをするが、いつまでもそうする事も出来ず帝は戻り、右大将に戻った幸村を呼び寄せ、舞の事を話す。

今はおんなに戻っている舞なのだから、尚侍から女御として入内するに問題は無いと思った幸村は、父と相談しますと答えて帝の前を下がる。

東宮はあまりに体調が良くないので父院の許へ下がり、すると徐々に具合が良くなっていくのだったが、これを機に出家したいと望むようになる。

しかし他に跡継ぎが居ない為、父院や帝から許可が下りないのだった。



新年を迎え、いろいろな行事をこなした帝はある日、宣耀殿に住まう舞を訪れる。

一人琴を弾きながら考え事をしている舞を覗いた帝はとうとう我慢が出来なくなり、夜具を被った舞の隣へ寝そべり、舞を抱き締めて言葉を掛ける。

「ずっと貴女を思っていました…」

いきなり抱き締めてきた男はてっきり信玄だと思っていたのが、違う声、この声は帝だ、と気付きどうしよう、とからだを縮こませる舞に、帝は優しく声を掛けからだに触れていく。

「貴女はこうなる運命だったのだ…全てを私に委ねなさい…」