戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第33章 八ノ宮中君の巻―家康ノ宮と三成ノ君-<R18>
家康様の気持ちを先制して、お困りにならないようにするのは私の立場を守る為でもある。
若君を産んだ今、家康様に捨てられては困るんだもの。
どんな状況でもこの若君は、匂ノ宮様の若君である事が大切だから。
私はどうなっても、若君だけはこの立場を失わないよう守らなくてはならないの。
三成様もその事は気付いていらっしゃるようで、おねえさまと一緒に私のところへいらしておっしゃってくださる。
「家康様もお立場上お忙しいため、何か不行き届きな部分がありましたら、私におっしゃってください。私は家康様ほどのちからはございませんが、光源氏の子として、全くちからがない訳ではございません。ですから必要な時がありましたら、私にご相談ください」
やはり不安に思うところはあるの。
「家康様を頼みに都に参り、若君を授かりましたけれど、家康様が右大臣様の姫様とご結婚なさった今、私の身分は安泰とは申し上げられないと思います。恥ずかしい思いをする前に、宇治の育った家に戻りたいと存じます」
それを聞いておねえさまは驚かれる。
「まぁ、舞さん、何をおっしゃるの?」
「だって不安なんですもの。家康様のご結婚相手の姫様は大層お美しく性格も申し分ないかたと評判です。そんなかたがいつか若君をお産みになったら、家康様は右大臣様のお邸にずっと滞在なさって、私の事はお見捨てになるのだと思ってしまうんですもの」
三成様はおっしゃる。
「お見捨てになる事はございませんよ。家康様は大層舞様を大切になさっています。それに宇治の家は寺にするべく修繕に入っておりますので、もう戻る事は適いません」
宇治の家はもう無いなら、私の行く先はなく、都のこの邸で若君を生きていくしかないのね、と不安な吐息を一人寝に漏らしてしまっていたの。