第3章 胸の痛みは散りゆく花のよう 幸村精市
ダリア
幸村精市
ある朝 寝坊して 慌てて部屋を飛び出し
ネクタイ上手く結べず 寝癖ついたまま
『今日は よく晴れた日だ 空が青いなんて』
時間忘れ いつもの癖で 降り立つ庭で
咲き誇る ダリアの花は 僕の背を軽く追い越し
見上げれば 色鮮やかに 流れ出すメロディ
体ごと倒れやすくて 大切に支えることが
必要な花だったのに こんなに綺麗に咲くから
――――
俺が君に対して心からの笑顔であまり笑えなくなったのは、いつ頃だっけ?
幸村「ハァ…ハァ…ハァ……」
俺らしくない……寝坊をするなんて。
でも、寝坊をしたのは君のせいなんだよ?
君が、あまりにも愛しいから……。
俺は、朝練に寝坊してしまった。
急いでいるせいで、いつもは直ぐに結べるネクタイも上手く結べず、髪の毛もとかさないまま、俺は急いで家を出る。
急いでいるのにも関わらず、フッと空を見上げる。
今日は良い天気だ……。
そんなことを思いながら、青く、雲1つ無い清み渡った空を見つめる。
そして、いつも学校に行く前に寄っていく、俺にとって、癒しの時間をくれる1つの場所に足を運ぶ。
暫く走って行けば、そこについた。
そう、俺が好きな花の1つ。
ダリアの花が沢山咲いている場所。
深呼吸をしながら、俺はダリアの花を見つめる。
ふぅ と一息吐いて、また学校へ走り出す。
――――
『せーいちーー!!!!』
誰かが俺の名前を呼ぶ。
呼ばれた方を見れば、俺の幼馴染みのが大声で俺を呼んでいる。
女の子なんだから、少しはおしとやかにすれば良いのに。
そんなことを思う。
『ちょっと、精市!今、よろしくないことを考えたでしょ?』
こう言うときだけ、丁寧?な口調にして……
全く…まぁ、らしいけどね。
幸村「ふふっ、そんなこと無いよ。」
俺は微笑んで言葉を返す。
こんなほのぼのとした時間が俺は好きだ。
『まぁ、いいや。
今日、精市の家に行くね、お母さんたち出張だからさ』
の親はよく海外出張へ行く。
俺の親と花怜の親は仲が良いから、俺の家へよくご飯を食べに来る。
今日は、まさにその日だった。