第27章 茶屋にて
「え…やってみるんですか?」
「あんたのいたところで売れてたんなら美味しいんだろう?
他にあんたの作れるものがあるなら、その未来の食べ物を菓子以外でも作ってみてよ」
「未来の食べ物、ですか?」
「ああ。味に問題なければ、茶屋で提供しよう」
葉月は目をぱちくりさせる。
「春さんって商売上手ですねぇ」
「私はおんな一人で店をやってきたんだよ。そのくらい考えるさ」
「春さんは一人でこの茶屋をやってきたんですか?」
「ああ。親も連れ合いも戦で死んでしまったからね。
息子は大きくなって嫁もらって独立したよ」
「へぇ、息子さんがいらっしゃるんですね」
「たまにここに来るから、その時は教えてあげるよ」
「ありがとうございます」
洗い物を終えて、羊羹の出来上がりを見る。
「固まってるかな」
型から外し、切り分ける。
一口分に切った羊羹を春に出す。
「ふーん」