第8章 nervous
「服、選べなくて。外れはないと思って」
「ごめん、大ハズレ」
「そっか」
「でもそれでこそつばめちゃんって感じがする」
「それは褒められてるのか褒められてないのか」
「まーまー、そろそろ行くべ」
緊張していたのがバカバカしい、男はそんな風に思いながら新緑茂る道を歩いていく。
(……あれ?)
おかしなことにひとりぼっち。
女は先程の場所から動きもしない。
それどころか片手を男の方に差し出して待っている。
「どーしたの?」
「いつも蛍ちゃんと出掛けるとき手繋ぐから」
(……もしかして俺にもやれってこと?)
男は考えあぐねていた。
月島と同じことをやれと言われて素直にハイハイと言える質ではない。
「ヤダ!」
「そう」
「月島と同じなのはヤダ。だからつばめちゃん左手出して」
「え? うん」
男はすっと差し出された左手を自らの右腕に絡めた。
「だから俺とはこれで!」
眩しいほどの笑顔に女は絡めた腕の力を少し込め、小さく「うん」と微笑んだ。