第7章 twinkle
「私が蛍ちゃんのこと考えてたのはムカつくからだよ、きっと」
「なにそれ。もしかしてケンカ売られてる?」
「違う、そうじゃない」
女は男の体温をきゅっと右手で抱きしめた。
そしていつも淡々とした感情のない声が少し揺れる。
「最近の蛍ちゃんがよくわからない。そのことに腹が立つ」
「へぇ?」
「最近の蛍ちゃん面倒くさかった。私を束縛しようとするし、理不尽だし。
蛍ちゃんのことなんて考えるだけで少し面倒な気持ちにもなってた。
でもやっぱりすぐそこにいる。
無意識のうちに考えちゃう。
最近のムカつく蛍ちゃんも嫌な大会の前じゃさっきまでの怒りなんて吹き飛んだ。むしろ蛍ちゃんの存在が勇気になった」
突然の告白に男はどうにも反応できずにいた。
それを知ってか知らずか女は男にありがとうと囁いた。
離れかけていた女がまた自分のそばに戻ってきたことについて男はホッとするしかなかった。
どんな邪魔が来たとしても女は自分を選ぶ。
共依存していることくらいわかっていたのだが。