第5章 Memories
「っ、は……気は済んだ?」
「済んでないよ。まだ足りない」
「もうこれ以上はいやだよ。風邪移りたくないし」
((ひどっ!!))
キスまでしておいて今更否定の言葉を浴びせにかかる女に下の2人はツッコまずにはいられなかった。ギシリと音を立て、ベッドのスプリングが大きくはね上がった。
「じゃあね、お大事に」
「明日」
ドアに手をかけた女の動きがピタリと停止する。背を向けたままの女を後ろから覆うようにしてドアに押し付ける。
「たかが大会って思っとけば?」
「……そうだね」
男は女の方を掴み、自分の方に振り向かせてもう一度キスをした。女はそれに答えてから今度こそ部屋を去った。
階段を下る音、玄関が開いた音を聞いてからベッドの下の影は姿を現した。
「――これが俺の答えですケド」
「…………」