一泊二日温泉旅行に行ってみた【実l況l者/全l身l組】
第10章 am 11:47
朝の散歩以降のことは正直記憶が薄い
自分でもぼんやりしてるってわかってる
レトさんとキヨくんのことが頭を巡って、普通じゃいられなかった
せっかくの旅行、楽しまなきゃいけないのに…
そんな私を二人は心配して声を掛けてくれたけど、
それすらも辛くて、自分の不甲斐なさに情けなくなる
旅館をチェックアウトした後、昨日レトさんが行けなかった温泉街周辺の散策やお土産を購入し、私たちはまた電車に乗った
行き先はもちろん知らない
車窓から流れていく景色にただ身を委ねた
◆◇◆◇◆
「次、降りるよ?」
レトさんの声にハッとして、荷物を纏めようとボストンバッグに手を掛ける
「…柚月?」
今日何度目かの心配そうなキヨくんの声
「えっ…ん?どうしたの?」
「調子悪いのなら、帰ろうか?」
「…っ……、大丈夫だよ!
ちょっと疲れてるだけ!」
キヨくんはレトさんと顔を見合わせて、表情を曇らせる
あぁまたこんな顔をさせてしまった
胸が締め付けられるように苦しい
一呼吸して、自分自身に喝を入れると、精一杯の笑顔を作り二人に向き直る
「ほんとに平気だよ?
ほら、もう着くみたいだし、二人とも荷物準備しなきゃ!」
二人の視線が痛い
そうだった、私ってわかりやすいんだった
今更ながら思い出すと、何か考えている様子だったキヨくんが口を開く
「…レトさん、先にあそこ行かねえ?」
「ん?…あー、そうやな。そうしよう。」
何やら私にはわからない会話
一応この旅行のコンセプトはミステリーツアーだってレトさん言ってたから、きっと聞いても教えてくれないはず
何かを企むように笑顔になった二人
連れられるまま、電車を降りた