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一泊二日温泉旅行に行ってみた【実l況l者/全l身l組】

第9章 am 6:00


数センチまで近付いた顔がピタリと止まると
しばらく静止した後、体が熱に包まれる

小さく収まったレトさんの腕の中

その温もりが優しくて
いつもの優しいレトさんで
胸の奥が微かに震えた

レトさんは私の肩に顔を埋めて、しっかりと力強く身を寄せる

「…柚月っ…。」

「…っ……!」

初めて呼ばれた、呼び捨てでの名前
消え入りそうなほど小さな声で苦しそうに呟く

「どうしたら、俺のことだけ見てくれる…?」

またぎゅっと腕に力が入る

体温が、鼓動が、言葉が、想いが
どうしようもなく伝わって苦しい

その苦しさが私の心を刺激して
涙となって零れ落ちる

しばらく抱きしめられた後、肩を掴まれ、ゆっくりと体が離れる
肩から頰に移った右手は、親指で落ちた雫を拭う

「俺とじゃ嫌?」

「……違っ…嫌なわけじゃくて…ただ…、」

「…うん」

「中途半端な気持ちでは、
…出来ないっ…!」

途端に溢れてくるものが抑えられずにぽろぽろと流れてくる

辛いのは私じゃないのに…
泣いちゃいけないのに…

涙を止められずに俯いていると、再び抱き寄せられ、レトさんの胸が冷たく濡れる

レトさんの温かい掌が背中をゆっくりとさすってくれた
子供をあやすように
何度も何度も


涙が止まり気持ちが落ち着くと、その様子に気付いたレトさんが大丈夫?と声を掛けてくる

「うん、ごめんね…、もう大丈夫だから。」

「いや、こっちこそごめんな。
柚月ちゃんの気持ちを確認せんで。
なんか気が急いて…
ごめん…。」

首を左右に振ると、ゆっくりと離れていく体

「…そろそろ戻ろっか。
キヨくん起きてたら面倒やしな。」

そう言って歩き出そうとした時、
あっ、と声を出しこちらに向き直った

「一応言っとくけど、俺はキヨくんとは違って寝ぼけてへんよ。」

目を細めて笑うと、また前を向き歩き始めるレトさん

言葉の意味を飲み込むと、胸が痛いほどに強く響く

この行動に嘘はないと、
本気なんだと念を押されたように感じたのは、きっと気のせいじゃない

しっかりと受け止めなきゃいけない

レトさんが、キヨくんが、
大好きだから

部屋に着くまで、私はレトさんの背中を見つめながら答えを探していた
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