一泊二日温泉旅行に行ってみた【実l況l者/全l身l組】
第9章 am 6:00
鳥のさえずりが聞こえる
ゆっくりと目を開けると、薄っすらと明るくなった部屋
いつの間にか眠ってしまったようで
カーテンの隙間から射し込む光が朝になったことを教えてくれる
枕元に置いてあった携帯を手探りで探し
液晶画面を見ると、まだ朝の六時
習慣てのは怖いもので
こんな時でも時間ピッタリに目が覚めてしまう
二人が目覚める前に部屋付きの温泉でも入ろうかなと、布団から体を起こすと、
隣の布団がもぞもぞと動いて、レトさんが起き上がった
あっ、とつい声が出る
が、時すでに遅し
浴衣が着崩されて肩が出そうになったレトさん
寝ぼけ眼でこちらをしばらく見ていたかと思えば、いつもの三倍くらい目を見開き、声を上げる
「えっ、えっ!
柚月ちゃん!?
なんでっ!!!」
「レ、レトさん!しーっ!しーっ!!!」
キヨくんが起きてしまうと思い、人差し指を口に充てて、静かにするように促すと、
レトさんは両手で口を塞ぐようにして、大きく何度か頷く
「実は…、」
◆◇◆◇◆
「はぁ…キヨくんもなんか大胆やなぁ。」
大きな溜息を吐いて、遠くをぼんやりと見つめるレトさん
吐いた息は冷たい空気で白く染まり、空に昇って行く
目が覚めた私たちは、今、旅館内の庭園を散歩中
キヨくんが起きてしまうからと、話している途中でレトさんは私を外に連れ出した
綺麗に整備された庭を並んで歩きながら、昨晩の出来事を伝える
と言っても
夜中ベッドに入ってきたこと
寝ぼけて女優さんに告白してたこと
話したのはこの二つだけ
時々相槌を打ちながら、レトさんは呆れた様子で聞いていた
一通り説明した後、少し考えるような仕草をすると、心配そうに私の顔を覗き込む
「柚月ちゃん、眠れんかったんとちゃう?」
まず一番に私を心配してくれる言葉を掛けてくれる
その優しさに胸が暖かくなる
「ううん、大丈夫だよ!」
と答えるも、少し寝不足なのは黙っておこう
「そっか…でもほんまビックリしたよ。
起きたらキヨくんが柚月ちゃんになってたんやもん。」
そう可笑しそうに言うレトさん
その時、視線を逸らした目は笑っていなかったことを、私は気付かずにいた