《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第27章 トド松END〜警部補とわたし〜(※)
「……橋本です」
恐る恐る出た瞬間、耳元でくすくすと笑い声が聞こえた。
『へぇ〜ゆりちゃんってば、男を紹介してもらってるの? 僕は聞いてないけどな〜!』
「っ!!!!!!」
私は立ち上がった。
勢いでバッグが床に落ちる。
「橋本くん? どうした?」
カフェを見回す。
二、三組客がいるが明らかに違う。
『そんなに慌てちゃだめだよ、ゆりちゃん。幹部の方の前ではお行儀よくしないと。いい? 上の人への印象はよくしておかないとね。うまく世渡りしていかないと、刑事だって生き残れない時代なんだから』
スマホを耳に当てながら、私はカフェの外へ目をやる。
ロビーには誰もいない。
少なくとも見えている範囲には。
「橋本くん、事件か? 違うならとりあえず一旦電話を切りなさい」
あつしさんが私の腕を引っ張った。
『ゆりちゃん、幸せになってね。そこにいる上田さんはいい人だよ。僕は何度か仕事を一緒にしたことがある。賢いうえに人間的にも優れた男だ』
「っ! 何言って――」
「橋本くん? 誰と話しているんだ?」
私は反射的に鞄を掴んだ。