《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第25章 一松END〜庭師とわたし〜(※)
「またかぁ。もう来る気なんてなかったのになあ……」
私は溜息をついて真っ黒な建物を見上げた。
『ブラック工場』
赤い看板にデカデカと書かれた文字。
工場からは相変わらず大きな機械音が響き、煙突からは嫌な色をした煙が立ち上っている。
「来る気なかったなら、来なくて結構ザンス! さっさと帰ってチョーよ!」
聞き覚えのある声。
視線を移すと、イヤミ所長が立っていた
「あ、こんにちは! イヤミさん!」
「あーはいはい。こんにちはザンスね。お客様が来たと連絡があったから来てみたら、またチョロ松警部のところの小娘ザンスか。迎えに来て損したザンス!」
イライラした様子で腕を組む。
「そんな塩対応……」
「フンッ、塩対応にもなるザンス! このご時世に警察にいきなり切られて、どれだけの損失があったと思うザンスか!? しょっちゅう警察にしょっぴかれるようになって、そのたびに工場は営業停止。大打撃ザンス! 今はもう警察は敵ザンスよ!」
イヤミ所長(マネージャーから所長になったらしい)がイライラするのも無理はない。
2年前のトド松先輩の事件をきっかけに、警察上層部とブラック工場の危険な関係は終わった。
事件が大々的にマスコミに取り上げられ、嗅ぎつかれたらまずいと思った上層部が一方的にブラック工場との関係を切ったという噂だ。
それまではブラック工場の数々の悪事に目を瞑ってきた警察だったが、関係が切れてからは容赦なく工場を摘発。
その度にイヤミ所長を逮捕しているが、釈放されるとまたすぐに問題を起こすため、キリがない。