《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第13章 青いプールに咲く花火(※カラ松)
***
カラ松さんが魚のように水中を滑り、水を吸って沈んだ服を一枚一枚拾っていく。
私はプールサイドでぼんやりとその姿を眺めていた。
「大丈夫か……? 寒いか?」
プールから上がったカラ松さんが心配そうに私を覗き込んだ。
「大丈夫です。ちょっとぼうっとしてただけで……」
カラ松さんがびしょ濡れになった服を手渡してくれる。
「すまないな……濡れている上にボタンも壊してしまって……弁償するよ」
私は頭を振った。
「そんな! カラ松さんのせいじゃないです……」
カラ松さんがフッと笑う。
「ああ、言い方が悪かったな。新しい服をプレゼントするよ。それくらいさせてくれ。いいだろう?」
「はい……」
カラ松さんは、自分の服をぎゅっと絞る。
水がボタボタと溢れた。
「さてと、もう遅いし送ろう……カラ松ガールの家は近いのか? こんな格好じゃ歩いて帰るわけにはいかないしな。車で来ていてよかった」
「私の家は近いですけど……カラ松さんは洋館に帰るんですよね? ちょっと遠いですね……」
カラ松さんは微笑んだ。
「いや、俺は今は館には住んでいないんだ。少し前にあの家を出た。今はこの近くのマンションに住んでいる」
私は驚いてカラ松さんを見つめた。
「そうなんですか? じゃあ、あの洋館は……」
「ああ、今のところは空き家だな。まあ、そのうち、処分を考えるつもりだが……生まれ育ったところだから、すぐに手放すのも惜しくて、な」
カラ松さんは、もう、あの洋館に住んでいない……。
「さあ、行こう。誰かに見られる前にここを離れないとな」
カラ松さんが手を伸ばす。
私は頷いて、カラ松さんの手に手を重ねた――。