《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第11章 一軍様のリッチなお誘い(※あつし)
「ねぇ、ゆりちゃん……。心の中では僕のことを『何もなしお』だと思ってたんだね……」
「へ? 『何もなしお』って何ですか?」
「…………」
危ないところだった。
愛人もいいかも……なんて、いいわけない。
でも、あつしさんの前に行けばその気になっちゃうという不思議。
恐るべし、一軍様……。
「トド松先輩! ここは色々と危ないです! もう仕事に戻りましょう?」
「あー、うん。そうだね。しょせん、僕は『何もなしお』だから」
話が噛み合わない。
「先輩、仕事まだまだ残っていますよね? 早く行きましょうよ」
「ハイハイ、行く行く。でも、僕は『何もなしお』だからね……」
あつしさんの誘惑から無事目を覚ました私は、死んだ目をしたトド松先輩と捜査一課に戻った。
デスクの上に積み上げられた事件案件の山が、否が応でも私を現実に引き戻す。
私はあつしさんから貰った名刺をしばらく眺めた。
束の間の甘い夢は、げに儚きものなり――。
名刺を無造作に折って鞄に投げ込むと、捜査に行くために私は立ち上がった――。