第1章 1
香菜はモニターを見つめとる。
「俺は男や。どんなに念入りに化粧をしても、良い服を着ても、完全には女になれん。───体が男やからな」
モニターに映る俺。
ウィッグを着けても、ドレスを着ても、血管の浮き出た筋肉質の腕、角張った指───隠せない『男』。
「何が言いたいかっていうと、香菜は磨けば輝くんや。PVでは俺がは『キレイな女』に見えとるかも知れんけどな、んなん作り物や。
本物の女・・・・・・香菜には勝てんて」
香菜の目が見開かれる。
「香菜がこのPVみたいにメイクをして、ドレスを着たら・・・・・・・・・確実に五人は骨抜きになる男がおるな」
「五人??そんなにいますかねぇ・・・・・・?」
「おるおる」
俺は笑いながら香菜を見た。
(分からんか・・・?you、ka-yu、kiyo、shuji・・・んで俺や)
香菜は手を顎に当てて、何か考えとる。
やがて顔を上げた。
「つまり・・・私は腰が細くなくても良いってことなんでしょうか?」
「せやな」
俺は笑顔で頷いた。
それから香菜の近くに寄り、声を潜めて耳打ちをした。
「・・・それに男は・・・・・・」