第1章 1
───ふと、視線を感じた。
視線が送られてくる先をチラリと見ると、視線を送っていた主が慌てて目を逸らした。
「・・・・・・何や───香菜」
「・・・え?何がですか?」
「とぼけるな。見てたやろ、今」
「・・・私が?yasuさんを?・・・見てませんよ?」
そう言って香菜は、それまでと同じ様に正面にあるモニターを見つめた。
───見てた。俺を。絶対。
これは俺の自意識が過剰な訳やなく、事実や。
俺は仕方なく香菜を気にしつつ、またモニターに視線を戻した。
モニターに映っとるんは、俺や。
ついこの間発売された俺───Acid Black Cherryの新曲・[Black Cherry]のミュージッククリップ
・・・いわゆるPVが流れとる。
それを香菜と一緒に観とる訳や。
───そう考えている間に、ほらまた、視線・・・・・・。