第15章 ズレた思い
月side
樹輝の体は力を失ったようにぐったりとなってしまった。
「……はは……」
すると、いきなり不気味に笑い出してさっきと同じ様に手をかざした。
「……こんな世界……大っ嫌いだ……つまらない……」
「っ!樹輝!目を覚まして!」
その僕の声は樹輝の耳には届くはず無く、街全体が揺れともに崩れだした。
まるで地獄のように、ビルは崩れ落ち、人々の悲鳴が響き渡った。
後ろの扉が開き、颯太達が出てきた。
「いっくん!わっ!」
かなりの揺れに立つことすらやっと。
「凄い……凄いよ!君!」
お兄ちゃんが喜んでる。
こんなの……あっちゃ駄目だ。
僕は急いで街の方に手をかざし、能力を発動させた。
樹輝が壊した街はあっという間に元通りに戻った。
「……月……どうやって僕の能力解いたの……」
「あっ……」
ほんとだ……自由に動ける。
「月でも邪魔するのは許さないよ。」
「お兄ちゃん、もうやめよ。こんな事……」
「……止めない。うっ!?」
後ろにいた将樹がお兄ちゃんの元に高速で動きお腹を殴った。
只でさえ、ちゃんと歩けないのに……
将樹はやっぱり凄い。
「月……早く樹輝を止めろ。」
将樹はお兄ちゃんを抱えたまま崩れ落ちた。
僕は急いでペンダントを拾い上げ、樹輝に向き直った。
「樹輝……」
僕の事が分からないのか、全然反応を示さない。
寧ろ、威嚇している。
樹輝の元へ歩み寄ろうとしたけど、さっき能力を使いすぎてなかなか前に進まない。
樹輝はビルの屋上にある瓦礫や工事で使われているであろう工具を力を使って僕に投げつけてきた。
「うっ……い……つき……僕だよ。お願い……思い出して。」
退けれる分は退け、物に当たりながらも少しずつ前に進んだ。