第13章 将来
樹輝side
「樹輝様!待っておりました!本日はおめでとうございます!」
「うん。久しぶりだな。」
幼い頃、俺の世話をしてくれた召使いだ。
自分で出来るからとよく逃げてた記憶がある。
あまりそういうのが好きじゃなかった。
「樹輝様、スーツ似合っておりますよ!」
「ありがと。……母さんと父さんは?」
「中におられますよ。樹輝様が帰ってこられるのを楽しみにしておられました。」
「そう。挨拶してくる。……あとさ、その話し方止めて。俺、そういうの嫌いだって前に言ったよね?」
「え、ですが!」
「いいから。じゃないと、もう口聞かないから。」
俺は手をヒラヒラと振りながら中に入っていく。
まだお客さんは来てないみたいだな。
「そ、それは困ります!樹輝様!」
遠くなるその声を無視して両親の元へ向かう。
「樹輝!ちゃんと来てくれたのね!」
「……まぁ、流石に。」
母さんが力強く抱きしめてくる。
「少し見ないうちに大きくなったな。」
「そんなに変わってないと思いますけど……」
父さんが近づいて来る。
母さんも父さんも綺麗な服を着ている。
家の中も凄い数のテーブルと料理が。
「ところで、進学先は決まったの?担任の先生から電話があったわよ?」
「いえ、進学先は決めてませんが将来は家を継ごうと。俺をここまで育ててくれた恩返しになるかなと思いまして。」
「ほんとか!それは良かった!」
父さんが嬉しそうに微笑む。
「父さん、母さん。俺ももうすぐ卒業です。1人だった俺を見つけ、ここまで育ててくれてありがとうございます。」
「樹輝ぃ……立派に育ったわねぇ。」
「ほんとに。」
2人は涙を流しながら抱き合う。
いつまでも変わらない2人だな。
その後、続々と招待されていた客が入ってきた。
かなりの人数だ。
父さんの仕事場の人達だろう。
俺を見つける度に祝の言葉を述べてくる。
「樹輝君!」
「華奈……お前も呼ばれたのか?」
「当たり前でしょ?許嫁だもの!」
そうだ……親が勝手に決めたんだ。
「まぁ!華奈ちゃん!綺麗ねぇ。」
「お義母様!お呼びいただきありがとうございます!」
「いいのよ。」
この場から逃げたい。
「樹輝!来なさい!挨拶の準備だ。」
父さんから呼び出される。
何とか逃げれたけど挨拶か……めんどくさい。