第75章 HIDE AND SEEK(影山飛雄)
「送る」
『要らない!
サヨナラ』
「…またな、姫凪」
呼ばれた名前が
耳鳴りみたいに
頭を揺らす
初めて男の子から
名前で呼ばれるのは
影山くんが良かった
全部全部
影山くんが良かった
気持ちは変わってない
なのに…
『どう…しよう…』
自分の正解が分からない
家までは数分で着く
ドアは開いてて
「おかえり、姫凪」
優しい叔母さんも来てて
「今日は姫凪の好きな
ハンバーグだから
早く宿題終わらせなさいよ」
美味しいご飯も出来てる
何一つ不自由はないのに
『…汗かいたから
先にお風呂入ってくる!』
笑えない
嘘んこの笑顔すら
出てこないよ
シャンプーの香りも
ボディーソープの香りも
いつもと同じなのに
全然知らない所で
お風呂に入ってるみたいに
ソワソワする
リビングから呼ばれてる様な気がして
ハッとしてお風呂場の時計を見ると
シャワーだけなのに
もうカナリ時間が経っていた