第75章 HIDE AND SEEK(影山飛雄)
少し息が切れかけた頃
見えた大きな背中
”影山くん”
そう叫ぼうと思って
飲み込んだ声
息が切れたから?
ううん、違う。
大きな背中で隠された
小さな姿と
「飛雄…」
甘い声が耳に入り
声も足も止めてしまったから。
この声、知ってる
今でも思い出すと痛いもん。
「まだ夕方以降は寒いね
家で話さない?」
中学の時より綺麗になった
あの子が
「飛雄また背伸びたー?」
影山くんの腕に戯れついて笑ってる
ヤダ…離れて
「ね?時間あるんでしょ?
家来てよ」
ヤダヤダ…行かないで
行かないよね?
だって早く帰って来いって
言われたんだし
その子の誘いなんかに
乗らないよ…ね?
間に割り込めば良いのに
幸い携帯(口実)もある
きっと私の方が
最近はその子よりずっと長く
影山くんと一緒に居て
明日も約束してて…
頭の中で
グルグルしてても無駄なのに
指一本動かないまんま
断って、なんて
ただ願うだけの
意気地なしな私