第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
「あぁ、そうだな
もう一回掛けて来る」
「へいへい。
侑といい、赤葦といい
ヤキモチ妬きのオンナ居ると
大変やなぁ
ま、振られんように気張りや」
「そっちはどうなんだよ」
ヘラヘラ笑う治に
少し膨れて返すと
「俺は他の女なんか見ぃへんし
仲良くもせんもん
それを一番知ってるんは
俺のオンナやしな」
自信満々に返ってくる
"そんなの俺も…"
そう言い返したかったけど
「サッサと電話せな
時間は有限やで」
「分かってる」
険悪になった今の状況では
言えなくて
小走りに外に出て
また携帯を弄る
名前を擦って鳴らすコール音
繋がらない時間がヤケに長く感じる
何度目かのコールの後
〈もしもし〉
耳に響いた低い声
「姫凪さん
良かった、繋がって
チャント話したくて…
今日何時に終わりますか?
飯、たまには外で食いませんか?」
慌てて早口で話し掛けると
〈まだ終わる時間分からないから
家の方が良い、な〉
俺とは逆に
どことなく冷めた様な声と返事が
聞こえて来る