第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
「俺こう見えて
スゲェ温厚だからね
特に可愛い子には!
今度コーヒーでも奢ってよ
あ、うまいシュークリーム付きなら
更に完璧!」
爽やかな笑顔と嘘では無さそうな
物言いに少しホッとして
『それくらいなら全然余裕!
オススメのシュークリームとコーヒー
休憩中に差し入れるよ』
「マジ!?ラッキー!
じゃあ、ついでに飲み会の方も宜しくね~」
『うんうん、全然余裕…って!マッキー!?』
「ラッキー!約束な!」
またもやヤラカシた。
鼻歌交じりに出て行くマッキーは
"今のナシ"を完全に無視
追いかける元気な足腰はもう無い
『しゃあない。
決まり掛けたら全力で阻止しよう。
とりあえず京治の元気な声を…』
愛しの京治の声を求めて
着歴から名前を擦ると
〈姫凪さん?
スイマセン…巻くに巻けなくて…〉
私より沈んだ京治の声
予想外な幕開けだと思ったものの
〈姫凪…ごめん〉
甘えた声は
そんな事どうでも良くなる程可愛くて
『京治、大丈夫?
光太郎に連れ回されて
疲れちゃった?』
ついつい私も家に居るトーンで
返してしまう