第4章 試しの門
私がいた頃とは随分変わったデントラの街並みを眺めながら、ククルーマウンテンまでの道をゆっくりと歩く。
元々、徒歩で行くつもりだったが、上まで登るのにバスがあるらしくそれに乗ることにした。
バスの中には、ごく普通の一般観光客に紛れてどう見ても気質じゃない奴らがいるが、あの程度じゃ門の中に入ることすらできないだろうから放っておいても問題ないだろう。
「えー、皆様!右手奥をご覧下さいませ!あちらが、ゾルディック一家が住むククルーマウンテンでございま〜す」
バスガイドさんの無駄にトーンの明るい観光者向けの案内を聞き流しながらそんな事を考えつつ、バスに揺られること数十分、眼前に重厚な造りの門が見えてきた。
「あれも久しぶりに見るな…」
私が呟きは誰にも拾われること無く、バスの停車音に掻き消えた。
バスに乗っていた観光客がぞろぞろと降り出すと、私もその波に乗って一緒にバスを降りた。
「こちらがゾルディック家の正門となりま〜す!別名『黄泉への扉』。入ったら最後、生きて出られないとの事からそう呼ばれています」
ごつごつとした龍の彫刻が異質な雰囲気を放つ。
観光者達はその門のあまりの壮大さに圧巻の声を上げたり、その前で記念撮影をしたりと各々だ。
「(黄泉への扉、ねぇ……)」
いいじゃない、生きて出てきてやりますとも。
あ、でも私の場合は出てくる必要はないのか?