第11章 ☆Story9☆ 試合観戦
ゆりside
私は大会の関係者に無理を言って、医務室まで案内してもらった。
ユウが言ったように、「私は藤ヶ谷ゆりです」って言ったら特別にと、
許可をいただいた……。
そして医務室に入ると、三船さんはベッドで横になっていた。
その隣のベッドには、対戦相手でもあった諸星さんもいた。
しばらくして、三船さんは意識を戻し普通に話せる状態に戻っていた。
(よかった……三船さんが無事で……)
心の底から、そう思った。
そして何より嬉しかったのは……
「あの時は、ありがとな……お前の声援があったから、俺は試合に勝てた……」
「っ……」
“私の声援のおかげで勝てた”……その言葉が、
凄く嬉しくて……
「ありがとうな……本当に……」
「っ……いえ……私はただ……」
頬を染めるゆり。
ちょっと、三船さんと距離が縮まったようで……嬉しい……
そう思った矢先、私のスマホに一本の着信が入った。
_プルルルルル…
「あれ?ゆりちゃんのスマホじゃない?」
「……。」
(誰からだろ……)
ゆりはスマホをバックから取り出す。
そして着信主は……
「……っ涼介さん……」
マネージャーである涼介からだった。
ゆりは急いで電話に出る。
「っもしもし涼介さん?」
『ゆりちゃん、休みの日に電話ごめんね。
でも、急用が入ってね……』
「あ、はい……」
『実は、美澤社長がドルチェのメンバーを集めて欲しいって連絡が来たんだ。』
「社長から?」
『うん、おそらくワールドツアーの話の可能性が高いかもしれないね。』
「っ……ワールド、ツアー……?」
『うん、今ゆりちゃんどこ?
事務所から離れているようだったら迎えに行くよ。』
「えっと、水鬼沢地区の総合体育館です……」
『総合体育館?なんでまた……』
「っちょっと、試合の観戦に……」
『そっか……わかった、じゃあ俺の車で行くから出入り口付近で待ってて。
くれぐれも、バレないようにね?』
「はい。」
『それじゃ、また後で。』